【ニュース】佐賀県沖、魚消え海底にヘドロ
今年は、小中学校で学習指導要領が新しい内容で施行され、環境教育が大きく謳われている。
海洋の環境問題と言えば、すぐ思い浮かぶものは海洋生物の過剰採取や汚染物質の流失などによる被害。
けれども、今回ニュースになったのは、海底の海砂の採取による環境変化だ。
以下、読売新聞の記事(YAHOO 5月7日15時18分配信)
佐賀・唐津沖に異変、魚消え海底にヘドロ…砂採取が原因?
佐賀県唐津市沖の玄界灘の海底がヘドロ状に変わりつつある。
生き物が姿を消し、アジの巻き網漁船は出漁をやめた。同じ海域でコンクリートの材料となる海砂が採取されており、一部の漁師らは採取が原因として中止を訴えている。この海域での採取と環境異変の因果関係は不明だが、県の調査でも唐津沖で大量の砂が消失したことが判明している。唐津の海に詳しい地元ダイバーに同行して海底の様子を探った。
◆「まるでクレーター」◆
灰色の粘土質の塊がねっとりと手にまとわりつく。海底40メートルからボートに引き揚げられたその塊は、砂ではなくヘドロだった。
「海底は月のクレーターのようにでこぼこで貝殻が散乱している。海底にスコップを突き刺すとヘドロが煙のように舞う。自然の浄化作用の限度を超えている」。海砂が採取されている唐津沖約7キロ地点に潜った浪口志郎さん(62)は憤る。
地元出身でダイビングショップを経営する浪口さんは一年の大半を唐津の海に潜って過ごし、その変化に詳しい。かつての海底は白砂がなだらかに堆積(たいせき)していたが、今では貝殻や石が散乱する別世界だ。生き物はいない。採取船がポンプで砂を吸い上げると海が濁る。濁りは時には何日も漂っている。これが少しずつでこぼこの穴の中に積もりヘドロになると指摘する。
◆関西で高い評価◆
環境への悪影響から瀬戸内海では2006年までに海砂採取が全面禁止されるなど全国的に採取中止の動きが広がっている。唐津では砂業者「唐津湾海区砂採取協同組合」が1969年から県の認可を受け採取している。それまでは重機で海岸を掘っていたが、組合結成前後から採取船が沖合の海底から大型ポンプを使ってくみ上げ、船上で砂だけを選別、貝殻などは海に投棄している。
同組合を巡っては、唐津海上保安部が07年、認可区域外で海砂を違法採取したとして砂利採取法違反で摘発し、組合などは罰金50万円の略式命令を受けた。県も採取を1か月禁止した。
福岡市の元採取業者によると、瀬戸内海での採取が禁止された今、「唐津砂」と言えば関西のコンクリート業界ではブランド品として高く評価されている。
問題は採取海域と漁場が重なっていることだ。「呼子のイカも小魚のイカナゴもきれいな砂に産卵する。良質な海砂のある場所は漁師にとっても好漁場なんです。イカナゴがいなくなればそれを食べるアジやサバも来ない」。浪口さんはそう訴える。
◆漁獲昨年ゼロ◆
「漁師はあわれなもんよ」。巻き網漁船「常幸丸」漁労長の一宮勝さん(82)のしわの刻まれた顔が苦悩にゆがんだ。例年なら大型連休のこの時期から秋にかけてアジ漁が行われる。夜間集魚灯を煌々(こうこう)と照らし、7隻の船団で漁をしてきた。だが97年に1億4700万円あった漁獲高は07年には約150万円に。原油高も重なり昨年から出漁をやめて漁獲はゼロだ。25人の乗組員の大半は現在、土木作業などで生計を立てている。
福岡と長崎に挟まれた狭い海域では長崎県の砂業者も採取を始めた。一宮さんらは昨年秋、佐賀、長崎両県庁を訪れ、漁業対策をとるよう直談判した。だが佐賀県は「地元漁協が採取に同意すれば認可するしかない」と消極的立場だ。
唐津市漁協には採取組合から毎年多額の「迷惑料」が払われている。漁協組合員の一人は「迷惑料は2億円だが、我々漁師は年間2万5000円もらうだけであとは漁協職員の給料になっている」と語気を強めた。
◆戻らない海◆
「お月さんは漁師の神様よ。潮の流れを告げてくれる」。一宮さんが言った。一枚の写真がある。常幸丸の漁師たちが水面まで引っ張った網の中で、月光を浴びて銀色に輝く大量のアジがはねている。男たちの笑顔はもっと輝いている。
唐津の豊かな海はもう戻らないのだろうか。岸壁では船底に藻が生えた常幸丸の船団が波に揺れていた。(森太、玉城夏子)
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