ゴールデンウィークまっただ中、皆さんどこかへ出かけたでしょうか?また出かける予定は立てていますか?
今日は、大型連休には付き物の「道路の渋滞」に関するサイエンスをご紹介します。

工事による渋滞、事故渋滞、自然渋滞など高速道路を通っていると、様々な渋滞に出くわします。今回ご紹介するのは、自然渋滞です。渋滞に巻き込まれて、「行く先に事故があるのだろう」と思っていると、実際には行く先に何もない・・・、ある地点を過ぎると自然に動き出すあの現象です。

自然渋滞はなぜ起こるのでしょうか?
そんな疑問をサイエンスで解き明かす研究が「渋滞学」です。

渋滞学では、車や人を“粒子”と捉えて考えます。
粒子というと、物質を構成する基本構造であり、それ以上分割できないもので、最近では素粒子などの言葉もよく聞きます。粒子の動きは、作用=反作用の法則で通常考えられます。
しかし、車や人は、その法則に充てはまりません。自分自身で動くことのできる「自己駆動型」の粒子なのです。

ただし、その動きは一次元的で、一次元を動く通常粒子の動きと同じ理論で考えることができるのです。
そのため、今までの粒子運動に関する計算式をもとに、自己駆動型粒子の速度を推測する計算式を導き出すことができています。

車をその計算式で計算すると、最高速度が時速100kmの高速道路では、車間距離が40m以下になると渋滞することが確認されました。40mなら10分以内で渋滞状態へと移行すると推定され、これは実測データとも一致しました。
ただし、車間距離が40m前後には、渋滞に至るかどうか「微妙な状態」が存在することも新たに分かってきています。そのような状態では、車間は詰まっていますが、時速70km~80kmの速度で走っています。しかし一台がちょっとブレーキを踏むだけで、たちまち渋滞になるのです。

名古屋大学では、学校の校庭に円形を描き、22台の車を使って実際に実験をした取り組みもあります。
全ての車に時速30kmで走ってもらっているのに、渋滞が起きてきているのです。
名古屋大学の取組みはコチラ

こうした渋滞の考え方は、車だけではなく、他にも色々と応用できます。
例えば、生物の生体内を考えてみます。生物の構成要素である細胞内で、ミトコンドリアや小胞が移動する際には、分子モーターと呼ばれる物質を輸送する役割を持った分子が活躍していることがわかってきています。これは、微小管と呼ばれる道を、キネシンやダイニンという名の分子モーターが自ら動いていきます。拡散して広がっていくわけではないのです。
分子モーターの動きが滞ると、それが様々な病気を引き起こします。例えば、神経疾患やアルルハイマー病の発症にもつながると言われています。
分子モーターの輸送システムを、渋滞学と同様に計算することで、分子モーターの動きを理解し、治療法や予防法の開発へ繋げることができるのです。

また、生物だけではなく、身の回りの現象でどのような渋滞があるかと考えてみましょう。意外と身近に渋滞学を応用できるものがあることに気付きます。
例えば、レジの長い行列、災害時の避難経路の渋滞シーン、工場で在庫がたまること。他にも、会社でなかなか出世ができないなども、人事の渋滞。アリの行列ですら、混むと速度が低下することがわかってきています。

渋滞は、嫌なことばかりイメージしがちだが、感染症の広がりを止めるという渋滞現象を作ることもできます。渋滞の仕組みを理解すると、解消することも起こすことも可能になるのです。

渋滞という現象面に着目し、そのしくみや解消方法を数理科学の力で分野横断的に研究する新しい学問として、今後も注目していきたい研究です。


文献
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1473-11.pdf
数理解析研究所講究録1473 巻2006 年164-175
東京大学 西成活裕

参照HP
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/tknishi/Papers.htm