【読み物】 「細胞内カルシウム制御機構の研究」
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皆さん、こんにちは。リバネスの本田です。私は大学で神経細胞について研究しており、幾分前のことになりますが、学会に参加してきました。学会で は、参加 した研究者が自身の研究を紹介したり、研究者間での情報交換をしたりします。その際、私事で恐縮ですが、私の研究を評価してもらえ、ポスター賞を頂くこと ができました。やはり、自分のやってきたことが評価されるのは嬉しいものですね。
ところで、研究者に与えられる学術賞と聞いてどんな賞が思い浮かびますか?ノーベル賞以外の賞を簡単に思い出せる方は少ないのではないでしょうか。実は、 日本国内だけでも、国の機関が授賞を行っている賞や、新聞社など民間企業が授賞を行っている賞など、非常に様々な賞があるのです。普段、テレビ等のマスコ ミではなかなか取り上げられない日本の学術賞ですが、今回から数回にわたって取り上げ、日本の研究者が行っている面白い研究を、分かりやすく紹介していき たいと思います!
第一回にあたる今回ですが、今回は「日本学士院賞」を取り上げたいと思います。日本学士院賞は、日本学士院と呼ばれる国の機関が授賞を行っている賞で、一 説では、日本で最も権威のある賞ともいわれています。実際、この賞を受賞した後にノーベル賞を受賞した研究者もたくさんいます。今年の日本学士院賞です が、およそ三週間前の3月12日に10名の授賞者が発表されました。今回はその授賞者の中から、御子柴先生の研究を紹介します。御子柴先生は、ある一種類 のタンパク質の働きを調べて、調べて、調べまくったことで、この賞を授賞しました。そのタンパク質の名前は、イノシトール-1,4,5-トリスリン酸受容 体(IP3受容体)。長くて読みにくい名前ですね。このIP3受容体、いったいどんな働きをするのでしょうか?御子柴先生の研究から、その一端を紹介した いと思います。
■カルシウムは骨を作るだけじゃない!
カルシウムと聞くと、皆さん骨を思い出すかと思います。「牛乳にはカルシウムがたくさん入っているから、しっかり飲んで丈夫な骨を作るんだよ。」とか言わ れて育った人もいるかと思います。しかし、前々回の記事(http://livacomi.jp/item_2588.html)で紹介したように、カル シウムは骨を構成しているだけではないのです!実は、このカルシウム、生き物が生きていくために、非常に重要な働きをすることが知られています。
私たち生き物は、非常にたくさんの細胞から構成されています。一つ一つの細胞の中には、核や小胞体などの細胞内小器官を除いた部分である、細胞質と呼ばれ る部分があります(下図)。普段は、細胞の内側と外側を仕切る細胞膜のおかげで、細胞質の中はカルシウム濃度が非常に低く保たれており、細胞の外と比較す ると、約1万分の1の濃度しかありません。しかし、ひとたびある種の刺激が細胞にやってくると、細胞の外から大量のカルシウムが細胞質の中に流れ込み、細 胞は様々な反応をします。例えば、ヒトデの卵では、精子が卵に入りこむと細胞質のカルシウム濃度が上昇し、他の精子が卵の中に進入できないようになりま す。その他にも、筋肉の収縮や免疫系の活性化など、細胞質のカルシウム濃度が上昇することで起きる現象が非常にたくさん知られています。

■IP3受容体の働き
このように、カルシウムは非常に多くの生命現象に関わっています。もし細胞質のカルシウム濃度が正しく調節されなかったらどうなってしまうでしょうか?筋 肉の収縮がうまくいかなくなったりするので、例えば、筋肉によって拍動する心臓は正常なリズムを刻むことができなくなってしまいます。つまり、細胞質のカ ルシウム濃度を正しく調節することは、生き物にとって非常に大切な営みなのです。そして、その働きをするのが、御子柴先生が発見したIP3受容体なので す!
IP3受容体は小胞体と呼ばれる細胞内小器官の膜を貫通しているタンパク質です。ある種の刺激が細胞にやってくると、IP3という物質が細胞質の中で作ら れ、IP3受容体にくっつきます。IP3がくっつくから、IP3受容体という名前が付けられているんですね。IP3受容体にIP3がくっつくと、IP3受 容体の形が変わり、IP3受容体の中をカルシウムが通過するようになります。小胞体の中にはたくさんのカルシウムが詰まっているので、ある種の刺激が細胞 にやってくると、小胞体から細胞質へと大量のカルシウムがIP3受容体を通過して流れ込むのです。このように、IP3受容体は細胞内のカルシウム濃度を調 節する働きを持っています。つまり、IP3受容体のおかげで、細胞はある種の刺激に対して正しく反応できるのです。
■研究者の力
今回は、IP3受容体が細胞の中でどのような働きをしているのかを紹介しました。御子柴先生は、さらに、IP3受容体が、精子と卵が受精する際に必要であ ることや、動物が受精卵から正常に発達するために必要であること、脳が正常に働くために必要であることなどを発見しました。その他にも、ここには書ききれ ないほどのIP3受容体に関する様々な発見をしています。このように、御子柴先生はIP3受容体の働きを徹底的に調べ、様々な生命現象にとって非常に重要 なたんぱく質であることを示したのです。今回の御子柴先生の授賞を通して、一つの事について徹底的に掘り下げていく力こそ、研究者の一番の力なのであると 改めて強く感じました。
<参考文献>
日本学士院
http://www.japan-acad.go.jp/japanese/activities/index.html
Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%AD%A6%E5%A3%AB%E9%99%A2%E8%B3%9E
総説 カルシウムチャネル研究の新たなる展開 「IP3レセプター」
日薬理誌 Vol 121, 241-253 (2003)
南江堂 「Essential 細胞生物学」 原書第二版 監訳:仲村桂子・松原謙一
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