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Category: コラム
Posted by: okuda

5月5日は端午の節句。
子どもの日と言えば、「こいのぼり」。真鯉や緋鯉が泳いでいる風景が心温まる。

そこで、5日までの間、こいのぼりに関するサイエンスをご紹介する。

祖父母から受け継ぐこいのぼりを見たことがあるだろうか?真っ白な木綿に、墨や天然染料でウロコが描かれているこいのぼり。50年たっても、日焼けをせずに残っている。なぜだろうか?

古くからあるこいのぼりは、職人が細部まで手作業で作っており、下絵を描き、ウロコを一つ一つ手作業で繰り返し色をつけたし描かれる。

下絵と色塗りの間の工程に秘密がある。それは、生の大豆の粉を水で溶いた「豆汁」(ごじる)と呼ばれる汁を塗っているのだ。

豆汁は、こいのぼりの日焼け止めクリーム。豆汁は緑豆に25%程度含まれる植物性タンパク質を発酵させたもので、北京の伝統的な栄養食品のひとつで、少し酸味がある飲料だ。

豆汁を塗ると、大豆に含まれる脂質の一種「レシチン」が紫外線を熱に代えて逃がすので変色が起こりにくくなる。紫外線から守り、日焼けを予防していた。

実は、このレシチンという成分は、私たちが使う日焼け止めクリームにも使われている。

 

Category: コラム
Posted by: okuda


ゴールデンウィークまっただ中、皆さんどこかへ出かけたでしょうか?また出かける予定は立てていますか?
今日は、大型連休には付き物の「道路の渋滞」に関するサイエンスをご紹介します。

工事による渋滞、事故渋滞、自然渋滞など高速道路を通っていると、様々な渋滞に出くわします。今回ご紹介するのは、自然渋滞です。渋滞に巻き込まれて、「行く先に事故があるのだろう」と思っていると、実際には行く先に何もない・・・、ある地点を過ぎると自然に動き出すあの現象です。

自然渋滞はなぜ起こるのでしょうか?
そんな疑問をサイエンスで解き明かす研究が「渋滞学」です。

渋滞学では、車や人を“粒子”と捉えて考えます。
粒子というと、物質を構成する基本構造であり、それ以上分割できないもので、最近では素粒子などの言葉もよく聞きます。粒子の動きは、作用=反作用の法則で通常考えられます。
しかし、車や人は、その法則に充てはまりません。自分自身で動くことのできる「自己駆動型」の粒子なのです。

ただし、その動きは一次元的で、一次元を動く通常粒子の動きと同じ理論で考えることができるのです。
そのため、今までの粒子運動に関する計算式をもとに、自己駆動型粒子の速度を推測する計算式を導き出すことができています。

車をその計算式で計算すると、最高速度が時速100kmの高速道路では、車間距離が40m以下になると渋滞することが確認されました。40mなら10分以内で渋滞状態へと移行すると推定され、これは実測データとも一致しました。
ただし、車間距離が40m前後には、渋滞に至るかどうか「微妙な状態」が存在することも新たに分かってきています。そのような状態では、車間は詰まっていますが、時速70km~80kmの速度で走っています。しかし一台がちょっとブレーキを踏むだけで、たちまち渋滞になるのです。

名古屋大学では、学校の校庭に円形を描き、22台の車を使って実際に実験をした取り組みもあります。
全ての車に時速30kmで走ってもらっているのに、渋滞が起きてきているのです。
名古屋大学の取組みはコチラ

こうした渋滞の考え方は、車だけではなく、他にも色々と応用できます。
例えば、生物の生体内を考えてみます。生物の構成要素である細胞内で、ミトコンドリアや小胞が移動する際には、分子モーターと呼ばれる物質を輸送する役割を持った分子が活躍していることがわかってきています。これは、微小管と呼ばれる道を、キネシンやダイニンという名の分子モーターが自ら動いていきます。拡散して広がっていくわけではないのです。
分子モーターの動きが滞ると、それが様々な病気を引き起こします。例えば、神経疾患やアルルハイマー病の発症にもつながると言われています。
分子モーターの輸送システムを、渋滞学と同様に計算することで、分子モーターの動きを理解し、治療法や予防法の開発へ繋げることができるのです。

また、生物だけではなく、身の回りの現象でどのような渋滞があるかと考えてみましょう。意外と身近に渋滞学を応用できるものがあることに気付きます。
例えば、レジの長い行列、災害時の避難経路の渋滞シーン、工場で在庫がたまること。他にも、会社でなかなか出世ができないなども、人事の渋滞。アリの行列ですら、混むと速度が低下することがわかってきています。

渋滞は、嫌なことばかりイメージしがちだが、感染症の広がりを止めるという渋滞現象を作ることもできます。渋滞の仕組みを理解すると、解消することも起こすことも可能になるのです。

渋滞という現象面に着目し、そのしくみや解消方法を数理科学の力で分野横断的に研究する新しい学問として、今後も注目していきたい研究です。


文献
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1473-11.pdf
数理解析研究所講究録1473 巻2006 年164-175
東京大学 西成活裕

参照HP
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/tknishi/Papers.htm

Category: コラム
Posted by: kanno

教育応援プロジェクト委員会では

今、教育応援プロジェクト冊子02号の制作の真っ最中です。

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Category: 科学の読み物
Posted by: kusu

サイエンスの読み物 prodused by リバコミ!

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こんにちは。リバネスの本田です。学術賞特集も今日で4回目を迎えました。

今回は、島津製作所系列の財団が授賞を行なっている島津賞を取り上げたいと思います。島津製作所といえば、ノーベル賞受賞者を輩出したことで有名な研究所 ですね。島津賞は、主に計測技術を開発した研究者1、2名に毎年授与される賞とのこと。そんな研究者の中から、今回は、脳を観る、つまり、脳の中で起きて いることを計測する技術を開発した松本先生を紹介したいと思います。いったいどんな技術を開発したのでしょう?



■ 記憶の貯蔵

私たちの脳は、非常にたくさんの神経細胞からできています。その数は1千億個とも言われています。しかし、この脳の中にどのように記憶が蓄えられているのでしょうか?この疑問に関して、大きく二つの説が唱えられています。

1つ目の説は、「おじいさんの顔はこの神経細胞が記憶している」、「おばあさんの顔は別の神経細胞が記憶している」というように、1つ1つの神経細胞が別 々の事柄を1つずつ記憶しているのではないか、という考え方です。しかし、この考え方では、1つの神経細胞が死んだ途端に、その神経細胞が担当していた記 憶が突然無くなってしまいます。つまり、覚えていたおじいさん、おばあさんの顔が、ある日突然完全に忘れてしまうというわけです。

しかし、皆さんそんな実感はないですよね?記憶が無くなるときって、少しずつ少しずつ曖昧になっていって、そのうちほとんど分からなくなる、と感じません か。そこで、2つ目の説。たくさんの神経細胞で1つのことを記憶しているのではないか、という考え方です。この考え方ならば、記憶が徐々に薄れていくこと にも納得できるため、多くの研究者がこの考え方を支持しています。

この「1つのことにたくさんの神経細胞が関わっている」という考え。これは、記憶に限ったことではありません。実は、物を見る際、音を聞く際など、あらゆ る行動の際に、たくさんの神経細胞が関わっていると考えられています。そのため、脳の中で起きていることをしっかりと理解するためには、たくさんの神経細 胞の活動をいっせいに観なくてはいけません。そう。松本先生が開発したのは「多数の神経細胞の活動を一度に観る技術」なのです!


■ 多数の神経細胞の活動を一度に観る

たくさんの神経細胞と言ってきましたが、どのくらいの数の神経細胞を見れば良いのでしょう?千個でしょうか?はたまた10万個でしょうか?おそらく、記憶 に関わる細胞の数と視覚に関わる細胞の数は違うと思いますが、必要な神経細胞の数は、まだ誰も知らないのです。必要な数が分からない以上、多くの研究者 は、できる限りたくさんの神経細胞の活動を観たいと思っています。たくさん観た分には、記憶や視覚など自身が知りたい現象に関わらない神経細胞の結果を無 視するということが出来るからです。

松本先生の手法では、動物を解剖して取り出してきた脳を用います。取り出した脳をスライスに切って、顕微鏡を用いて観察するのです。しかし、ただ観察した だけでは神経細胞は見えても、その細胞が活動しているのかどうか分かりません。そこで、脳のスライスの中に、ある色素を加えます。するとその色素は神経細 胞に取り込まれ、神経細胞の活動に応じて異なる光の強さの蛍光を発したりします。そのため、この色素を用いて光の強さ等を測定することで、たくさんの神経 細胞の活動を同時に、しかもミリ秒単位で観ることができるのです。

この手法はすでに発明されていましたが、従来の方法では一度に100~200箇所の記録しか観測できませんでした。ここで、松本先生の登場です!松本先生 は、この手法を大きく改善し、約16,000箇所もの記録を一度に観測できる計測器を開発したのです。この技術により、一度に非常にたくさんの神経細胞の 活動を観測できるようになり、新たな発見が生み出されることになったのです。


■ 脳型コンピューターの実現に向けて

今回は、松本先生の開発した技術を紹介してきました。しかし、そもそも何のためにそのような技術を開発したのだと思いますか?松本先生が目指したもの。そ れは「脳型コンピューターの実現」です。通常のコンピューターは命令通りに動くだけですが、私たちの脳は、経験に基づいて学習することができます。しか も、その学習は、自身の価値基準の影響を強く受け、価値を認めたものに関する情報を処理できるように学習します。そこで、今回紹介した技術を用いて、記憶 の仕組みを調べ、その仕組みに基づいた脳型コンピューターを目指したのです。

今回紹介した技術は現在までに着々と進歩しており、若干解像度が劣るものの、生きている動物の脳にあるたくさんの神経細胞を同時に観ることができるように なってきています。いつになるか想像もつきませんが、遠い未来には、脳内全ての神経細胞の活動が同時に測定できる時代が来るかもしれません。その頃には、 脳型コンピューターが普及していたりして。最後は、松本先生の言葉で締めくくりたいと思います。

「脳を活性化するのは愛です。」

それでは、またお会いしましょう。



<参考文献>

「心にいどむ認知脳科学 記憶と意識の統一論」
著者:酒井邦嘉 出版社:岩波書店

「脳の神経活動を16,000箇所で実時間計測する」
市川道教、飯島敏夫、松本元  日本物理学会誌 Vol.47, No.9, 707-712 (1992)

「理工学からの脳研究とその手法 脳研究に対する生物物理的アプローチ」
松本元  Biophysics Vol.35, No.4, A25-A29 (1995)

「光計測法による高次神経系の機能的構造解析」
飯島敏夫、市川道教、高島一郎、松本元  Biophysics Vol.34, No.5, 219-222 (1994)

Category: コラム
Posted by: okuda

牛の全遺伝情報(ゲノム)を解読し、牛乳の生産などに関する遺伝子を解析したと、24日付の米科学誌サイエンスに発表された。
研究チームは、日本の畜産技術協会付属動物遺伝研究所(福島県西郷村)を含む国際研究チーム。
研究成果は、牛乳や牛肉の品質、生産効率の向上のほか、哺乳類の進化過程の解明に役立つと期待されている。

牛は、羊やヤギなどと同じ反芻(はんすう)動物で、胃が4つあり、胃に生息する微生物の力を借りて草を消化し、栄養にしているのが特徴。反芻動物のゲノムがほぼ完全に解読されたのは初めて。

解読対象は英国原産の肉用牛ヘレフォード種で、常染色体29対とX性染色体。たんぱく質を生み出す遺伝子は少なくとも2万2000個と推定された。同じ哺乳類の犬、ヒト、マウス、ラット、オポッサム、カモノハシと比べると、犬が最も近縁で、次いでヒトが近かった。2万2000個のうち約80%がヒトと共通であることが判明されている。

 

(米農務省・イリノイ大提供)

 

発表された科学誌「Science」での論文

ウシのゲノム配列:反芻動物の生態学と進化の窓口
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/324/5926/522

タイトル『全ゲノムにおけるSNP変異の調査からウシ品種の遺伝的構造が明らかとなる』
http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/324/5926/528

Category: コラム
Posted by: okuda

東京四谷で、中学校・高等学校の先生向けの実験研修を株式会社リバネスが開催します。

今年のテーマは「授業でできるノーベル賞技術」。
2008年に日本人研究者下村博士がオワンクラゲの蛍光タンパク質(GFP)による研究でノーベル賞を受賞したことは記憶に新しいですね。
そこで、今年度1回目の研修では、蛍光タンパク質の遺伝子を用いて、遺伝子組換え実験を行います。

参加した方全員に実験を体験して頂き、若手研究者が最近の研究動向なども含めて紹介しますので、ぜひご参加ください。

詳しくはこちら →http://www.kyouikuouen.com/recruiting/item_77.html

 

 

Category: コラム
Posted by: okuda

国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在中の宇宙飛行士若田光一さんが、日本実験棟「きぼう」の窓から日本列島を撮影した動画が、24日金曜日に公開された。

若田さんは9日に、きぼうの船内実験室ある窓の一つから、ビデオカメラで地球を撮影した。ちょうど日本上空を通過する時間帯で、約6分間の動画には四国や東北地方、北海道の地形がはっきりと映っていた。宇宙航空研究開発機構のホームページで公開されている。
(動画:http://brd.dailynews.yahoo.co.jp/SIG=12b1kksqt/EXP=1241238186/*http%3A//iss.jaxa.jp/library/video/jp_from_kibo_200904.php

また、若田さんが地上とライブ交信するイベント「若田宇宙飛行士と10万人の宇宙飛行士」が、埼玉県にある青少年宇宙科学館にて24日に行われた。
参加した少女から、「宇宙からさいたま市は何色に見えますか」と質問。
若田さんは「灰色に見えます。大都市はだいたい灰色です。アスファルトが多いからだと思います」と答えた。

また別の子が、「宇宙から見た日本はきれいですか」と聞くと、若田さんは「青い海に囲まれ、緑が豊富。富士山もきれいで、ふるさとの日本が一番美しく見えます」と答えた。

ガガーリンの「地球は青かった」で有名な美しい青い惑星地球。
宇宙に行ったことのない私たちには、なかなか想像できないが、一つ一つの国や地域を見てい行くと、それぞれオリジナルの色が見えてくるのだろう。
ISSをはじめとする宇宙研究がすすみ、世界の人が宇宙旅行をしてふるさとの色を見る日がくることが待ち遠しい。

 

 

Category: ニュース
Posted by: okuda

米国の不妊治療専門医Panayiotis Zavos氏が、14個のヒトのクローン胚(はい)を作ることに成功し、このうち11個を4人の女性の子宮に移植したことを、22日付の英紙インディペンデント(Independent)に発表した。
Zavos医師によると、結果的に、胎児が生存の可能性のある妊娠に成功した女性は1人もいなかったそうだが、今後1~2年のうちに、クローン赤ちゃんが誕生する可能性を伝えている。

哺乳類のクローンを生み出す方法は、大きく分けて2つに大別される。一つは受精後発生初期の胚の細胞を使う方法、もう一つは皮膚や筋肉など成体の体細胞を使う方法だ。
今回のZavos医師は、羊の「ドリー」を誕生させたのと同様に、体細胞を用いたクローン技術を使用している。

幹細胞を取り出すために試験管でヒトクローン胚を作成した科学者は多い。実際に人間に移植する研究者はほとんどいない。しかし、Zavos医師は、ヒトクローン胚を実際に女性の子宮に移植してしまった。その結果、多方面から様々なの意見が飛び交っている。

しかし、クローン技術の人間への応用は、可能性も秘めている。例えば、移植用臓器を作製する場合、患者が自分の細胞を使って臓器移植に必要なクローン臓器を作製できる可能性も考えられている。ただし、クローン臓器のみを産出する技術は現在はなく、今少し議論の余地はある。
けれども、不妊治療や移植などの社会からの要望に応えられる可能性が高く秘められているからこそ、クローン技術に関連する研究は盛んである。安全に使われるようになる日が来ることが望まれる。

Category: ニュース
Posted by: kusu

サイエンスニュース prodused by ゆるりぃ

 

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ニュースソース:asahi.com:ISS施設に米コメディアンの名前? ネット投票1位に


アメリカで、あるコメディアンがブームとなっている。
なんと、宇宙に浮かぶISS(国際宇宙ステーション)の一施設の名前になるかもしれない。

米国では、これまでISSの名前について、「Unity(結束)」「Harmony(協調)」など、宇宙開発の精神や国際協力にちなむ名前がつけられていた。が、今回新たに。新しい小部屋を設置するにあたり、国民に公募したところ、出てきたのが「Colbert(コルベア)」という、アメリカの人気コメディアン、「スティーブン・コルベア」氏の名前だった。

 テレビ番組で「私の名前はどうか」と呼びかけたためらしいが、「宇宙にも民主主義はあるべきだ」と米国の下院議員も声明を発表するなど、議論を呼んでいる。コルベア氏と番組の視聴者がISSの命名に関心を持ってくれたことは喜ばしいことで、23万票をないがしろにはしません」と、NASAの広報担当者は真剣に検討しているとのこと。

 笑いやエンターテイメントは、人々の関心、興味を集める大きな力となる。
今回の一件は、もっと多くの一般の方に興味を持って欲しい事柄について、
すこしエンターテイメント的要素を加味するだけで多くの評があつまったわけだから、

その可能性を示すひとつの結果といえるのではないだろうか。

Category: 科学の読み物
Posted by: kusu

 

科学の読み物 prodused by リバコミ!

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こんにちは。設楽愛子です。学術賞特集第3回目になります。
さて、みなさんは、「海の幸」はお好きでしょうか?マグロやヒラメ、ブリといった魚からアワビ、カキ、エビ、カニなど……私たちは日々たくさんの魚介類を 食べています。その海の幸をみんながよりおいしく、安全に、たくさん食べられるように研究するのが水産分野の研究。今回は農林水産省が行う農林水産業の分 野で優れた功績を挙げた若手研究者に対する賞「若手農林水産研究者表彰」を受賞した坂本崇先生の研究をご紹介します。



■おいしくて安全な魚を育てるため

魚介類を食卓に届けるものための方法には「漁業」と「養殖」があります。このうち養殖というのは農業で野菜を育てたり,畜産業で牛や豚を育てたりするのと 同じで、海の中に生け簀をつくってその中で管理して魚を育てる方法です。海に漁に出かけるのと比べて、飼育環境から餌までを管理することができるため、安 定した量の魚介類を生産できるというメリットがあります。しかし,養殖の技術というのはまだまだ研究が進んでおらず、「品種改良」によってよりおいしく育 てやすい品種がつくられている野菜や畜産物と違い,野生の魚を管理して育てているというのが現状。

けれど品種改良は、長い年月をかけて選抜と交配を繰り返さなければなりません。時間をかけて育てても「寒さに強い」形質や「実が大きい」という有用な形質 が次の世代へと確実に遺伝されるわけではないので,時間と労力,そして運も必要になります。そこで,そんな手間のかかる品種改良をスピードアップさせるた め,生物の設計図である「DNA」を利用した研究をしているのが坂本先生です。


■特徴の目印「DNAマーカー」

生物は「DNA」という設計図を持っています。ヒトならヒトの、イネならイネの設計図というように、DNAにはそれぞれの特徴が情報として書き込まれてい ます。また、同じ種類の作物でも「コシヒカリ」と「ひとめぼれ」など品種の違うものがあります。この品種の違いというのもDNAに書き込まれた情報の ちょっとした違いによるもの。

DNAはアデニン(A)チミン(T)シトシン(C)グアニン(G)の4つの並び方での違いを作り出しています。もし「寒さに強い」形質を持つ個体だけが 持っている「並び方」を見つけられれば、それを目印にして「寒さに強い」品種を探し出すことができます。この方法なら環境や天候に左右されることもなく、 また見た目の違いは全くない作物の中から有用な形質をもつものだけを選抜して育てていくことができ、品種改良を早く行うことができます。このときの目印に したDNAの並び方を「DNAマーカー」(既出http://livacomi.jp/item_647.html)と呼びます。

坂本先生はこのDNAマーカーを使って「病気に強い魚」を選抜し飼育する技術を開発しました。


■病気に強い魚をつくる

魚を育てるとき決まった広さの生け簀の中でたくさんの魚を飼育すると,魚にストレスがかかったり、発生した病気が蔓延したりしてしまいます。しかし、治す ためとはいえ,むやみに薬を餌に混ぜて与えると海に薬が流れ出てしまい野生の生き物たちに影響があるかもしれません。そこで現在は,薬に頼らないでも養殖 を行えるような予防接種となるワクチンの開発や、病気に強い魚を飼育するための遺伝子工学を利用した研究が行われています。その中で坂本先生が目をつけた のが、野生の魚の中にいる「もともと病気に強い個体」の存在。生け簀の中で病気が蔓延しても死なない個体がいるのです。その個体だけを見つけ出して育てる ことができれば、病気による大量死を防ぐことができます。

従来の品種改良を用いると、魚を一度病気にして生き残った魚に子どもを産ませ,さらにまた病気にして生き残った魚をまた飼育……というように、長い時間を かけて数多くの工程を踏まなければなければなりません。また、一度病気に感染した魚はたとえ生き残っても病原体となる菌を体に持っていて,病気にはならな いけれど感染はしている状態「キャリアー(保菌者)」になってしまう可能性があります。そのような魚を一度もその菌にかかったことのない魚と一緒に飼育す ると大量死の原因になります。

病気に感染させずに病気に強い魚を見つけ出すために利用するのがDNAマーカー。坂本先生は病気が蔓延しても死なない魚と死んでしまう魚の2つの集団のDNAを比較することで、特定の病気に強いという情報が書かれている設計図の近くに存在する目印を見つけ出しました。

目印と言うのはA, T, C, GのうちCとAが何回も繰り返される「マイクロサテライト」という場所にありました。マイクロサテライトの繰り返しの回数が特定の病気に強い魚と弱い魚で 違っていたのです。そこをDNAマーカーとして利用し,ある特定の病気に強い魚だけを選んで飼育することで,病気に強い集団をつくることに成功しました。

坂本先生の成果のひとつがリンホシツチス病という病気にかかりにくいヒラメの作出。リンホシツチス病は、皮膚に綿のようなできものができてしまうウィルス 病,たとえ感染してもヒラメが死ぬことはありませんが見た目が悪いため売ることができなくなってしまい問題となっていました。坂本先生はリンホシツチス病 にかからないヒラメの目印を見つけ出しました。そして,その目印をDNAマーカーにしてヒラメを選び飼育していくことで,リンホシツチス病にかかりにくい ヒラメの品種を開発しました。現在その品種は養殖用の稚魚として生産され,日本中で育てられています。

また、坂本先生は、他の病気や違う種類の魚でもDNAマーカーになるマイクロサテライトを見つける研究をしています。さらに,リンホシツチス病にかからな いヒラメの中で,違う病気にも強い種類を見つけ出せれば、より病気にかかりにくく,強い養殖魚を飼育できるようになります。何年か先には、坂本印のDNA マーカーを持った養殖魚が魚売り場にずらっと並んでいるかもしれません。


<参考文献>
坂本崇(2004) マイクロサテライトマーカーを用いた連鎖地図作製と有用遺伝形質の解析 日本水産学会誌 

K. Fuji, K. Kobayashi, O. Hasegawa, M. R. M. Coimbra, T. Sakamoto, N. Okamoto,2006 Identification of a single major genetic locus controlling the resistance to lymphocystis disease in Japanese flounder (Paralichthys olivaceus).Aquaculture,254,203-210

Takashi Sakamoto, Nobuaki Okamoto, Mamoru Ishii, Masashi Maita, Yayoi Ikeda,1996 RFLP and VNTR markers isolated from the genomic DNA of rainbow trout and cytogenetic mapping by fluorescence in situ hybridizationFisheries Science,62,719-722

Category: 科学の読み物
Posted by: kusu

科学の読み物 Produced by リバコミ!

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こんにちは。衛藤です。前回に続いての学術賞特集。今回ご紹介するのは、恩賜賞を授賞した浅島誠先生です。恩賜賞というのは、日本学士院賞の中でも、特に 優れた研究に贈られる賞です。浅島先生が研究するのは、発生学。私たち生き物の体をたった1つの細胞である受精卵から作り上げていくメカニズムを研究する 学問です(発生学に関する記事→http://livacomi.jp/item_2582.html)。

私たちの体は、手足や、顔にある目・鼻・口、臓器である心臓や消化管などの「器官」を持っていますが、これらはどのような仕組みによって作られるのでしょ うか。例えば私たちの手足を見てみましょう。それは筋肉・骨・神経など沢山の「組織」からできていて、それが組み合わさって手足は動きます。このように、 器官というのは複雑にできており、それを形作るためには複雑な仕組みが働いていそうです。浅島先生はそんな器官の「形作り」を試験管やお皿の中で再現する 研究をされています。



■ 試験管の中で器官を作る

浅島先生は、私たちの持つ多くの器官を、試験管の中で作り出しました。その実験をご紹介しましょう。

実験にはカエルの胚が使われました。胚というのは、卵の中にいて、やがてオタマジャクシになるものです。この胚の一部にアニマルキャップと呼ばれる組織が あります。浅島先生はこの組織を取り出し、「アクチビン」と呼ばれるタンパク質を加えて培養しました。すると、驚くべき事に心臓ができあがったのです。さ らに、この「アクチビン」の濃度を変えたり、他の因子と組み合わせたりすることで、心臓や腎臓、すい臓などの16種類にも及ぶ器官を作り出すことに成功し ました。

例を紹介すると、図1のように、先ほどの組織に単純な処理を加えるだけで、心臓や腎臓など、複雑な形やはたらきを持つ器官を作ることができました。



さらに、その人工臓器をカエル胚に移植することで、体に心臓を二つ作ることができたり、腎臓の機能が失われたオタマジャクシを正常化させたりすることがで きました。はたらきを持った人工臓器を作ることができたのです。では、ヒトではどうでしょう。医療へ応用することができたら、私たちが病気や事故で機能を 失った臓器を取り戻すことができるかもしれません。

しかし、そこには大きな壁がありました。それは臓器を「立体的に」作るということです。カエルなどの両生類では立体的な臓器を作ることに成功していたのに 対し、哺乳類では成功していませんでした 。例えば、万能細胞と言われるES細胞が、心臓や腎臓を含めて沢山の種類の組織を作れることがわかってきましたが、立体的な臓器は作ることは難しいと言わ れています。

最近になって、マウスES細胞で人工臓器を作ることに成功した例が出てきていますが、浅島先生はその立体的な臓器再生のメカニズムの手掛かりとなるような研究を、15年以上も前から温め、それを今まさに実現しています。そのホットなニュースをお伝えしましょう。


■ カエルの細胞、宇宙へ

2009年3月、浅島先生はカエルの腎臓の細胞を宇宙へと打ち上げました。日本人宇宙飛行士、若田光一さんらによって、その細胞を使って国際宇宙ステーションにて実験が行なわれました。カエルの細胞での、立体的な臓器形成のメカニズムの手がかりを得るためです。

その実験に使われたのは、カエルの腎臓の細胞からとったA6細胞です。この細胞はお皿の上で培養すると、集まって「ドーム構造」と呼ばれる立体的な形を作 ります(図2.A)。この構造は他の臓器からとってきた細胞では見られませんが(B)、生き物の中にある実際の腎臓の組織の形と似ていることから、A6細 胞は生き物の持つ立体的な形作りを調べるために適していると言えます。

そして、このA6細胞は地上で作り出した微小重力下の実験では、ドーム構造を作ることができませんでした。ただ、この実験は人工的に作り出した微小重力下 でのお話です。本当の無重力である宇宙ではどのような結果が得られるかわからないので、この細胞を宇宙へ飛ばそうと考えたのです。

宇宙においてそれらの細胞がどのような形を作り、また遺伝子レベルではどのように変化するか追うことで、立体的な臓器形成の手がかりを得られるかもしれません。



その実験データはつい数日前に地球に到着しており、今後浅島先生のグループで解析される予定です。カエルの細胞が宇宙ではどのようにその振舞いを変化させ ているのか、詳しい結果がとても楽しみです。この研究をスタートとして、両生類の立体的な形を作る仕組みが明らかになれば、それが手助けとなって、いつか ヒトでも臓器再生ができるようになるかもしれません。


■研究スタイル~身近な自然に不思議を感じることの大切さ~

浅島先生の研究は宇宙まで広がり、宇宙と生き物を結びつける試みをされています。このような研究からは、先生の自然への幅広い興味が感じられました。今で も先生の研究室では毎年、研究材料であるカエルを山や田んぼに取りに出掛けるそうです。自然の中の生き物を観察し、満天の星空を見る。そのような身近な自 然の中で不思議を見つけ、信念を持って探求していく姿勢が、新しい発見につながっていくのだということを強く感じました。


<参考文献>
発生メカニズムのダイナミクス 上野直人・八杉貞雄・野地澄晴編集

浅島誠研究室HP http://xenopus.c.u-tokyo.ac.jp/

JAXA 宇宙航空研究開発機構HPより生命科学実験の内容 
http://kibo.jaxa.jp/experiment/theme/first/domegene/

哺乳類における臓器再生
東京大学医科学研究所より2008/3/12
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/research/newspaper/es.php

山陽新聞WebNewsより2009/3/4 http://www.sanyo.oni.co.jp/newsk/2009/03/04/20090304010006251.html

Category: ニュース
Posted by: leaveanest

2009年4月10日午後5時6分、宇宙教育プロジェクトで使用する若田宇宙飛行士のビデオメッセージ撮影が無事成功を収めました。

【2009/4/13】(文:立花智子)

->宇宙教育Pブログでも報告

ビデオレターの収録に立ち会ったのは、本プロジェクトからは統括責任者である丸、プロジェクトリーダーの藤田、事務局の立花の3人。また、本プロジェクトと並んでCOSMO FLOWER 2008の「花伝説・宙へ!」を推進する株式会社有人宇宙システム株式会社の3名及びその関係者5名含め合計11名が参加しました。このビデオレターは、本プロジェクトに参加する子どもに向け、若田宇宙飛行士から研究の意義を伝え子どもへエールを送ることを目的としています。

国家機密の管制室へ入るために

午後3時30分につくば市にある宇宙航空券旧開発機構(JAXA)筑波宇宙センターに集合しました。その後、有人宇宙利用室にて午後4時からおよそ 30分間、収録見学の際の注意事項について説明(ブリーフィング)を受けました。ビデオレターの収録は、国際宇宙ステーションに現在長期滞在中の若田宇宙 飛行士が、JAXAのスタッフと連絡をとりながら、日本実験棟「きぼう」の天井に固定されたビデオカメラを使って1人で行います。私たちはその様子を JAXAの管制室から見守ります。管制室には国家機密をはじめ持ち出せない情報が多くあるため、一般人によるビデオ、カメラの撮影は禁じられました。ま た、ブリーフィングのために配布された資料も回収されました。今回のような民間企業向けのメッセージの収録や、それを外部の人間が管制室から見学すること はこれまであまり例がないため、JAXAスタッフの緊張感がひしひしと伝わってきます。またこの収録には、JAXAのメインスタッフ11名に加え「きぼ う」やISSを支えるJAXA及びNASAのスタッフの何百人もの人間がかかわっていると聞き、気が引き締まる思いでした。

 

いよいよ管制室へ

午後4時50分、いよいよ管制室へと誘導されました。管制室は沢山のパソコンとモニターが並んでいます。そのうち2台のモニターに写っているのは、 日本実験棟「きぼう」の「今」の様子で、ビデオ収録の準備をしている若田宇宙飛行士のリアルタイムの映像が映し出されていました。日本実験棟「きぼう」の 中は、電車の車両1両分よりも少し小さい位の大きさで、ノートパソコンがいたるところに設置され、いろいろな配線がはみでているような部屋でした。若田宇 宙飛行士は、その中を1人ふわふわと浮かびながら、今まさに、ビデオカメラの設置を行っているところでした。

 

ミッション成功!

17時5分、予定どおりビデオレターの収録が始まりました。若田さんが録画した映像はリアルタイムで管制室から見ることができます。若田さんはカメ ラの前で、ミヤコグサとシロイヌナズナの入ったジップロックをふわふわと浮かばせながら、宇宙教育プロジェクトでミッションに参加する子どもに向けて、熱 いエールを送りました。これまで長い間準備してきた本プロジェクトのスタッフとしても、「あの若田さんが宇宙からエールを送ってくれている!」という実感 がわき、感激ひとしお。自然と拍手がわきおこりました。

実はタイミングよく今回のミッションのスタートでる17時6分は日本の上空を「きぼう」が通り過ぎるタイミングです。国際宇宙ステーションを見よう というJAXAのページ内の「ISSの2D位置情報」に時間を入力して確認することができます。日本の上空で若田宇宙飛行士が日本の子どもたちにメッセー ジを収録する。偶然かも知れませんがなんとも粋なはからいです。

 

7月から実施される全国フォーラム「宇宙種授与式」で上映

今回撮影された映像は、2009年7月から全国12箇所で順次行われる「宇宙種授与式」で、若田宇宙飛行士からのミッション要請という形で上映され ます。このイベントには一般の方々の参加も可能です。全国フォーラムについての情報は6月から随時、当ホームページに掲載していきます。また6月に発刊さ れる『someone』や『教育応援プロジェクト』でも紹介しています。どうぞご期待ください。

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宇宙教育プロジェクト事務局:educ@leaveanest.com 担当:藤田

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Category: 科学の読み物
Posted by: kusu

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皆さん、こんにちは。リバネスの本田です。私は大学で神経細胞について研究しており、幾分前のことになりますが、学会に参加してきました。学会で は、参加 した研究者が自身の研究を紹介したり、研究者間での情報交換をしたりします。その際、私事で恐縮ですが、私の研究を評価してもらえ、ポスター賞を頂くこと ができました。やはり、自分のやってきたことが評価されるのは嬉しいものですね。

ところで、研究者に与えられる学術賞と聞いてどんな賞が思い浮かびますか?ノーベル賞以外の賞を簡単に思い出せる方は少ないのではないでしょうか。実は、 日本国内だけでも、国の機関が授賞を行っている賞や、新聞社など民間企業が授賞を行っている賞など、非常に様々な賞があるのです。普段、テレビ等のマスコ ミではなかなか取り上げられない日本の学術賞ですが、今回から数回にわたって取り上げ、日本の研究者が行っている面白い研究を、分かりやすく紹介していき たいと思います!

第一回にあたる今回ですが、今回は「日本学士院賞」を取り上げたいと思います。日本学士院賞は、日本学士院と呼ばれる国の機関が授賞を行っている賞で、一 説では、日本で最も権威のある賞ともいわれています。実際、この賞を受賞した後にノーベル賞を受賞した研究者もたくさんいます。今年の日本学士院賞です が、およそ三週間前の3月12日に10名の授賞者が発表されました。今回はその授賞者の中から、御子柴先生の研究を紹介します。御子柴先生は、ある一種類 のタンパク質の働きを調べて、調べて、調べまくったことで、この賞を授賞しました。そのタンパク質の名前は、イノシトール-1,4,5-トリスリン酸受容 体(IP3受容体)。長くて読みにくい名前ですね。このIP3受容体、いったいどんな働きをするのでしょうか?御子柴先生の研究から、その一端を紹介した いと思います。



■カルシウムは骨を作るだけじゃない!

カルシウムと聞くと、皆さん骨を思い出すかと思います。「牛乳にはカルシウムがたくさん入っているから、しっかり飲んで丈夫な骨を作るんだよ。」とか言わ れて育った人もいるかと思います。しかし、前々回の記事(http://livacomi.jp/item_2588.html)で紹介したように、カル シウムは骨を構成しているだけではないのです!実は、このカルシウム、生き物が生きていくために、非常に重要な働きをすることが知られています。

私たち生き物は、非常にたくさんの細胞から構成されています。一つ一つの細胞の中には、核や小胞体などの細胞内小器官を除いた部分である、細胞質と呼ばれ る部分があります(下図)。普段は、細胞の内側と外側を仕切る細胞膜のおかげで、細胞質の中はカルシウム濃度が非常に低く保たれており、細胞の外と比較す ると、約1万分の1の濃度しかありません。しかし、ひとたびある種の刺激が細胞にやってくると、細胞の外から大量のカルシウムが細胞質の中に流れ込み、細 胞は様々な反応をします。例えば、ヒトデの卵では、精子が卵に入りこむと細胞質のカルシウム濃度が上昇し、他の精子が卵の中に進入できないようになりま す。その他にも、筋肉の収縮や免疫系の活性化など、細胞質のカルシウム濃度が上昇することで起きる現象が非常にたくさん知られています。




■IP3受容体の働き

このように、カルシウムは非常に多くの生命現象に関わっています。もし細胞質のカルシウム濃度が正しく調節されなかったらどうなってしまうでしょうか?筋 肉の収縮がうまくいかなくなったりするので、例えば、筋肉によって拍動する心臓は正常なリズムを刻むことができなくなってしまいます。つまり、細胞質のカ ルシウム濃度を正しく調節することは、生き物にとって非常に大切な営みなのです。そして、その働きをするのが、御子柴先生が発見したIP3受容体なので す!

IP3受容体は小胞体と呼ばれる細胞内小器官の膜を貫通しているタンパク質です。ある種の刺激が細胞にやってくると、IP3という物質が細胞質の中で作ら れ、IP3受容体にくっつきます。IP3がくっつくから、IP3受容体という名前が付けられているんですね。IP3受容体にIP3がくっつくと、IP3受 容体の形が変わり、IP3受容体の中をカルシウムが通過するようになります。小胞体の中にはたくさんのカルシウムが詰まっているので、ある種の刺激が細胞 にやってくると、小胞体から細胞質へと大量のカルシウムがIP3受容体を通過して流れ込むのです。このように、IP3受容体は細胞内のカルシウム濃度を調 節する働きを持っています。つまり、IP3受容体のおかげで、細胞はある種の刺激に対して正しく反応できるのです。


■研究者の力

今回は、IP3受容体が細胞の中でどのような働きをしているのかを紹介しました。御子柴先生は、さらに、IP3受容体が、精子と卵が受精する際に必要であ ることや、動物が受精卵から正常に発達するために必要であること、脳が正常に働くために必要であることなどを発見しました。その他にも、ここには書ききれ ないほどのIP3受容体に関する様々な発見をしています。このように、御子柴先生はIP3受容体の働きを徹底的に調べ、様々な生命現象にとって非常に重要 なたんぱく質であることを示したのです。今回の御子柴先生の授賞を通して、一つの事について徹底的に掘り下げていく力こそ、研究者の一番の力なのであると 改めて強く感じました。


<参考文献>
日本学士院
http://www.japan-acad.go.jp/japanese/activities/index.html

Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%AD%A6%E5%A3%AB%E9%99%A2%E8%B3%9E

総説 カルシウムチャネル研究の新たなる展開 「IP3レセプター」
日薬理誌 Vol 121, 241-253 (2003)

南江堂 「Essential 細胞生物学」 原書第二版 監訳:仲村桂子・松原謙一


http://www.nippi-inc.co.jp/

教育応援企業に株式会社ニッピが加わりましたのでご報告いたします。 教育CSR企業一覧はこちら

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