教育応援プロジェクトvol.1 生徒の意欲を引き出す「本物」の力
生徒の意欲を引き出す「本物」の力
二松學舎大学附属高等学校 志村肇先生
コンプレックスを払拭したい
幼い頃から過度の競争にさらされ ペーパーテストでの順位付けが課され る。常に下位に甘んじている子は「ど うせ自分は物覚えが悪い」、「自分は数 字が苦手だ」と自らの能力を責め、ペー パーテストができないことに対してコ ンプレックスを抱き、努力をする前に あきらめて、無気力になってしまう。 勉強ができないことで、いじめられる のが怖くて、不良じみた格好をして集 団で反抗し、いじめる側に回る者もい る。 「私はそれを突き崩したい」と志村 先生はきっぱりと言い放つ。「ペーパー テストは物差しのひとつなので、それ だけにとらわれないでほしい」という のが先生の願いだ。何かひとつ、好き なものを持っている子どもは、それに 向けて努力をすることができる。たと え今の学力が志望校のレベルに及ばな かったとしても、「あの大学で自分の 好きな勉強をしたい」という純粋な気 持ちがあれば、頑張れるのだという。 だから今の子どもたちに必要なのは、 まずは自分が好きだと思うものを見つ けること。そしてそれには、様々な『本 物』の体験が必要だ、と先生は考えて いる。
生徒と本物との出会い
志村先生は年に2~3回、生徒とと もに食べられる植物を探しに校外に出 かけ、植物1つ1つに説明を加えつつ 天ぷらにして食べたり、薬草を煎じて 飲んでみたりする。また文化祭の時期 には近くの神社でシイの実を拾い、自 分たちで粉にしてクッキーを作ったり もしている。「植物の名前は、自分で 見たり食べたりしないと覚えられな い。実体験なしに、教科書だけで用語 のように覚えようとするから、覚えら れないのです。だから授業がつまらな くなってしまうのです」。 さらに志村先生は年に1度、リバネ スの若手研究者を呼んで実験教室を開 催している。今年のテーマは「お米の DNA 鑑定」。見た目はほとんど同じ ブランド米と一般の米を、PCR とい うDNA を増やす技術を使って鑑定す る実験だ。ここでも志村先生は、いろ いろな銘柄の米を実際に食べさせ味覚 テストを行い、さらに興味を引き出し ていた。 また、「研究や夢、野心をいきいき と語る本物の大学院生と直接話ができ る機会を持たせたかった。リバネスの 若手研究者は特殊な人ではない。同じ 悩みを抱えて高校時代を駆け抜けた人 たちなのだ。そこから何かを学び取っ てくれるはずだ」と期待を語っていた。
強い意志が出会いをつくる
「本物と出会える授業は楽しそうで はあるが、入試対策の遅れにつながる のでは」との問いに先生は「偏差値や 評判からではなく自分の好きなものに 根ざした純粋な興味から選んだ大学で あれば、子どもは自ら進んで勉強しま す。教師は学習のきっかけを与えるだ けの、いわば案内人なのです」と答えた。 このような活動は理想的な学習のか たちに思えるが、費用と事前準備の面 では苦労が多い。数十万円を超えるよ うな金額になったときには、誰がお金 を負担するかが大きな問題となり、保 護者と周りの先生方の理解が不可欠 だ。この壁を乗り越えるのに必要なの が、発起人となる先生の「絶対に実現 してみせる」という強い意志。「本当 に大変です」と語りながらもいつもに こやかな志村先生からは、生徒への熱 い想いが感じられた。この想いが、生徒 と本物との出会いをつくり続けている。
まずは自分が好きだと思うものを見つけること
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